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【ライヴレポート】2013.12.20 佐々木亮介Acoustic One man Live “SHIMOKITAZAWA BLUES”@下北沢DaisyBar
2013.12.20 佐々木亮介Acoustic One man Live “SHIMOKITAZAWA BLUES”@下北沢DaisyBar




まやかしの様な夜だった。

何かに化かされた様で、全く現実味がない。

まるで、佐々木亮介の夢の世界へ迷い込んでしまったかの様だった。

ジャンルだとか。

時代だとか。

国だとか。

そんなカテゴライズなんて、


佐々木亮介のブルースの前では、どれも等しくただの音楽なのだ。







+++++++

下北沢Daisy Bar.。ソロの弾き語り公演とはいえ、ツアーの追加公演で日比谷野外大音楽堂が決まっているバンド、a flood of circle(以下フラッド)のフロンマンである佐々木亮介が立つには、些か小さすぎる舞台だ。開演の19時30分。ふらり、と音も無く佐々木がそのステージに姿を現す。少し気恥ずかしそうに、そしてどこか慈しむように、オーディエンスで埋め尽くされたフロアを眺める。佐々木曰く“ブルースと言えばスーツ”との事で、この日ばかりはトレードマークの革ジャンはお留守番。(ライヴ終了後の写真はしっかり革ジャンを着込んでいた訳だが)何せ“SHIMOKITAZAWA BLUES”と銘打っているのだから。「おはようございます、佐々木亮介です、」と口火を切ると、ビールを一口。フラッドを代表するロックン・ロールナンバー「ブラックバード」で、ブルース・ナイトの幕は開けた。

この日のライヴは3部構成と相成った。初っ端は、佐々木亮介による単独の弾き語りだ。年表を指でなぞる様に、古いものから新しいものへと、フラッドの楽曲を演奏してゆく。2008年以降、毎年アルバムをリリースして来たフラッド。それに付随して行われるアルバムツアー。するとセットリストはそのアルバムの楽曲を中心に構成されることは世の常だろう。けれど、昔の曲が恋しい時も。それはオーディエンスも然る事ながら、ミュージシャンもまた然り。佐々木亮介も例外に非ず、だ。こんな時じゃないと、やる機会がないから、と「ラバーソウル」を。「この曲、誰かやってくれるならあげますよ、」と宣う佐々木。ざわつくオーディエンスに「全然愛してないみたいになっちゃうか、大事にするよ、ちゃんと、」とまんざらでも無い苦笑。こんな遣り取りからも窺える様に、この日の佐々木はいつもより少し饒舌で、終始とてもリラックスしていた。ビールを飲んでは気ままにギターをつま弾きながら、譜面台に立てられた自筆の書き込みたっぷりの譜を繰る。ああ、これもやりたいな。これもいいな。やりたい曲があり過ぎるよ。愛おしげに独り言る様は、上機嫌以外の何物でもない。

そうして漸く、次の曲が決まると、佐々木は徐にこの日の会場である下北沢Daisy Barとの馴れ初めを語り始めた。最初はフロアの床が見えてしまうくらい、チケットが売れなかった事。同世代のバンドと酒を酌み交わした事。そして、フラッドが大きくなるにつれ、次第にDaisy Barでのライヴが減っていったこと。年表はフラッドに於けるターニング・ポイントともなる2010年に差しかかる。初シングル「Human License」とアルバム「ZOOMANITY」のリリース。そしてベーシストの脱退に伴うメンバーチェンジ。まさに激動の年であり、現フラッド誕生の年でもある。これは全くの予想外で、度胆を抜かれたのだが、ここで演奏されたのはなんと「Quiz Show」だった。「今日はHuman Licenseじゃ面白く無いからね、」と佐々木。しかしこのアコースティックアレンジが、格別だった。エレキギターの印象的なリフのイントロで始まる音源とは異なり、「10,9,8,7…」気怠げなギターのストロークに乗ったカウントダウンから始まる。そのしゃがれ声のカウントが1に達した時、ぴたりとギターが止む。刹那の静寂に切り込まれる「タイムアップ、」の声。叫ぶ訳でもなく、まるで重力を存分にはらんだ様に、足元に落ちる声だった。だがしかし、それを合図に佐々木は激しくギターを掻き鳴らしショー・タイムを始めた。サビ直前、音を溜める様なストップモーションがある。その「静」から一気に「動」のサビが爆発する。フラッドに対しても幾度と無く言っているのだが、佐々木亮介と言う男、こういう演出が滅法上手い。ライヴパフォーマンスにおける所作の美しさで、彼の右に出る者は居ようか。「クイズの答えがわからなかった人へ、」と「ロストワールド・エレジー」。実に、粋なセットリストだ。

「ロスト・ワールドエレジー」と並んで「“失くしもの”の歌」。佐々木がそう称したのは「コインランドリー・ブルース」だった。第一部のベストアクトだと言えるだろう。〈まるで世界中がそっと、耳を澄ませているみたいな夜に、コインランドリーに響くのは、僕が好きだったあのブルース〉冒頭、無防備で剥き出しの佐々木の声が僅かなギターの音色に支えられながら、響く。これ程までに優しい歌声を、未だかつて聞いた事がない。この楽曲を覆うのは、佐々木本人の言うとおり、得も言われぬ喪失感だ。それは、甘い夢のさ中に、それが夢だと気付いてしまった時の様。けれど、不思議な事に佐々木が歌うと、そこにひとつのあたたかな灯りが燈る。まるで子守唄の様に、その喪失を撫で、そっと抱き締める。正直、驚いた。佐々木亮介が、これ程までに物語するヴォーカリストになっていたとは。楽曲を演奏し歌う中で、彼は過去の自分や物語の主人公と出会い、対話し、私小説から、誰もがそこへ入り込むことができる物語へと変換し、フロアへと還元する。それは、一番新しいシングル「Dancing Zombiez」に収録されているバラードナンバー「月面のプール」でフラッドが目指したものだった。この下北沢の夜にも、「月面のプール」は披露された。「昔なんて、振り返らなくても良くて、前を見て転がり続ければ良くて。でも現在までには歴史があって、それを自分はすぐ忘れてしまいそうになるから、」と。こんな風に佐々木は前置いた。より届く為のブルースへ。その試みは、まだ試行錯誤の途中だ。しかし、完成への糸口は確かに、しっかりと、掴んでいるようだ。

 フラッドの“一番新しいブルース”「オーロラソング」でセルフカバーの弾き語りは終了。続いて第二部。まずは佐々木亮介が単独でカバー曲を演奏する。この企画に際して、フラッドの公式Twitterで、カバー曲のリクエストを募集していた。それに応える形で、スピッツの「愛のことば」を披露。〈今/煙の中で溶け合いながら/探しつづける愛のことば〉何度もリフレインするサビを力の限り、絞り出すように歌う佐々木。「Quiz Show」の答えである“愛”を幸福感に満ちて歌い上げるのがフラッドの「I LOVE YOU」なら、失われてしまいそうなそれを、必死に守るのが「愛のことば」そんな気がした。そして二曲目はveni vidi vicious(以下veni)の「Good Days」。veniとフラッドは同世代で交流があったという。同曲が収められているCDを、佐々木は自ら買ったという逸話を披露。因みに、Czecho No Republicを結成したのも、元veni のメンバーである。それについて「チェコ、最近すごい売れてるよね、いいな、」とぼやく場面も。佐々木のカバーコーナーも終了し、いよいよゲスト第一弾の登場と相成った。ステージに現れたのは、タンクトップから覗く腕にびっしりと入ったタトゥーが強烈なインパクトのギタリスト、Duran(内藤デュラン 晴久。THE ROOTLESS)。お酒を飲みながら話した際に意気投合し、演奏を聴く前にこの公演への出演をオファーしたというのだが、それはどうやら極めて正しい判断だった様だ。耳をつんざく様な鋭い音。熱量を爆発させるようなアグレッシヴなギタープレイ。まるで暴れ馬の様。だがしかし。その全てが確信犯。日本の音楽シーンに、こんな演奏をするギタリストが居たとは。リハーサルと異なるチューニングで佐々木がギターを弾き始めてしまい、Duranが「いじめかと思った」と苦笑。そんな笑えるハプニングでセッションの幕は開ける。フラッドの「Summertime Blues供廚鬟屮襦璽検爾淵ターの応酬で濃厚に決め込んでみせる。オーディエンスに「煙草を吸う女子はいる?」と投げ掛ける佐々木。2曲目は「プカプカ」。流石、というべきか。(Duranに)「この曲知らなかったみたいですけど、」と言っていたが、そりゃあそうだろう、と思わず突っ込みを入れたくなった。全く、20代の選曲とは思えない。「プカプカ」は昭和46年にフォークシンガー西岡恭蔵によって歌われた楽曲。佐々木は良く、「日本語のブルース」という表現を用いる。この「プカプカ」もそれにあたる訳なのだが。この表現が、私は結構好きなのだ。要するに、日本語詞で佐々木が“ブルース”だと感じた歌を表する言葉だ。冒頭でも少し触れたが、洋楽だとか邦楽だとか、ジャンルだとか。そういった枠に囚われるのではなく、ただ曲の持つ情報(歌詞が日本語である)によって括り、そこに佐々木独自のネーミングを付ける。それは無粋なカテゴライズではなく、佐々木の音楽を聴くリスナーにとっても嬉しいブランディングだと言える。正直、私は往々にして紹介される、佐々木曰くブルースな曲達に、今までかなりの高確率で惚れてしまっている。佐々木は、どうやら無愛想だがなかなか腕の良いセールスマンの様だ。しかし、リスナーにとってそれは幸福な事である。恐らく、現段階では佐々木に「自分の好きな曲をリスナーにも好きになってもらおう、」的な意識は薄いだろう。寧ろ、自分が敬愛するものを自らが表現したい、という意識の方が強い様に思う。しかし、それはそのままで良い。寧ろそのままが、良い。それが何よりの説得力になるのだから。

 「そろそろリズム隊も欲しくないですか?」そんな佐々木の言葉で第三部がスタート。ステージに登場したのは外村公敏(ドラム:SHERBETS)、松澤ノボル(ベース:Number the.)。「俺、今からめちゃくちゃ勇気ある事します。外さん招いて、ベンジーさんの曲やります、」と佐々木が前置いての1曲目はBlankey Jet Cityの「ペピン」。曲名を聴いたフロアは、声にならない声が充満する。圧巻だった。ステージから音が鳴っている、という感覚は、最早なかった。圧倒的な音圧が、フロアを溺れさせる。Duranはブルージーでポーカーフェイスなリフで楽曲の副旋律を奏でていたかと思えば、間奏では一転、甘くメロディアスに化ける。外村公敏のウェットなドラムが楽曲の密度を高める。松澤ノボルのベースは、楔の様に、楽曲の要所々に刺さってくる。そしてそんな演奏を背に受け止めて佐々木が叫ぶ。「奇跡のステージ」。佐々木の言葉を借りる。まさにそうとしか言いようがない。これが偶然が生んだ産物であり、計画的に集められたメンバーでないなんて、嘘だろう。まるでもう随分と付き合いが長い様な、こなれた、美しく擦り切れ馴染んだ音。余裕も、色気も、存分に備わっていた。それは、佐々木の優れたコンダクト能力に由る部分も大きい。色の濃い演奏たちに自分の歌を乗せ、曲として調和させる。それは、フロントマンとして必要不可欠な要素。こういう能力と言うのは、往々として自分のバンド外でライヴをした時に見えて来るもの。佐々木のフロントマンとしての資質を垣間見た瞬間だった。そしてその有能なフロントマンは「楽しくなってきた、」とくしゃくしゃの笑顔を見せる。そこで「ペピン」の余韻もそこそこに、最後のゲストを紹介。「ブルースと言えばこの先輩を紹介しない訳にいかないでしょう、」とScoobie Doのコヤマシュウがステージに。ギンガムチェックのシャツに白いスーツ、手にはブルースハープを携えている。挨拶代りのセッション後、「アコースティックワンマンなのに、お前がエレキ持ってどうすんだとか思わないで、」と少し恥ずかしそうに苦笑しつつ、ブラックファルコンを手にする佐々木。後ろが見づらい、との理由でここからは全員立って演奏。Bob Dylanの「Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)」からScoobie Doの「What's Goin' On」へ。佐々木とコヤマシュウのヴォーカルの掛け合いが実に、良い。コヤマシュウの歌声を生で聴くのは初めてだったが、…すっかり骨抜きにされてしまった。メロウだが、甘ったるくは無い。触れようと近付けば、煙に巻かれてしまいそうな、粋な色気。コヤマシュウと言う男は、その出で立ちも相俟って、どこかルパン三世を思わせる。(※筆者はルパンが至上の色男だと確信して止まない為、褒め詞である)佐々木も、色気のあるヴォーカリストである事に違いはないが、持ち歌のイニシアチヴか、キャリアか。「What's Goin' On」は、完全に持って行かれた。続いて、以前Scoobie Doのライヴにフラッドがゲスト出演した時にも演奏したというフラッドの「Sweet Home Battle Field」。佐々木とコヤマがオーディエンスを煽り、ハンドクラップを要求。二人のヴォーカリストによる、〈Sweet home,baby…〉の応酬は、今回が初めてではない事もあり、阿吽の呼吸。なんて贅沢な「Sweet Home Battle Field」だろうか。この曲が、本編最後のナンバーとなる訳だが〈戦場で会おうぜ〉と力の限りに叫ぶ佐々木。それはもう二度目はないかも知れない。そんな奇跡のメンバーへの最上級の感謝と、賞賛の詰まった餞の言葉の様に思えた。

 宴もたけなわ。「Sweet Home Battle Field」の火照りが冷めないうちに、アンコールに応え、佐々木が再びステージに現れた。「やばかったでしょ、あのバンド。」「もう一回観たかったら、自分でブッキングして」「バンド名考えておけばよかった、」と自慢げに饒舌になる。ギターに手を掛け、一人で歌うのかと思いきや、「せっかくシュウさん来てるから、Scoobieやろうと思って練習したんですけど、」と言いつつ、袖を窺う。二人で合わせての練習はしていない状況だが、佐々木は袖のコヤマに「一緒にやりたいんですけど、大丈夫ですか?」とオファー。ややあってコヤマが再登場。“座ってしっぽり系”でやりたいという佐々木のリクエストをコヤマが快諾。演奏されたのはScoobie Doの「つづきのメロディー」。この曲は先にも触れたScoobie Doが「Sweet Home Battle Field」をカバーしたライヴで演奏された曲で、その歌詞が当時の佐々木にシンクロしたという。この文章を書くにあたり、改めて「つづきのメロディー」の歌詞を読んだ。敢えてここでは引用しないが、納得だった。即興とはいえ、コヤマが佐々木の呼吸を読み、合わせてくる。それをさも嬉しそうに受け、歌う佐々木。まるで師弟の様。アンコールラストは再び佐々木単独に戻り、Billy Joelの「Piano Man」に佐々木オリジナルの日本語詞をつけた「BLUES MAN」。奇跡の一日を締めくくり、そっとまやかしの靄をはらう様に、佐々木が歌う。それはとても美しく力強い、日本語のブルースだった。

余談だが、アンコールのMCで、とても、印象的な佐々木の言葉があった。ソロでライヴをする事に対して、「俺にはフラッドという素敵な帰る場所があるから、今日を栄養にして全国を回って行こうと思います、」と口にした。バンドメンバーのソロ活動。こういった報せを聴いた時、バンド音楽に親しんでいる方なら、“嫌な予感”を感じた事が一度はあるのではないだろうか。つまり、端的に言えば“解散”や“活動休止”を示唆する行動である、と。あまつさえフラッドは今まで、何度も損なわれてしまいそうな局面を迎えて来たバンドだ。私は、佐々木の弾き語り活動に対してそういった気配を感じてはいなかったのだが、当の本人が、“敢えて”口にした。ああ、そうか。何度もフラッドが消えてしまいそうになった時、一番怖かったのは誰だろうか。間違いなく佐々木本人だろう。だから、今のメンバーに対して彼は、常に感謝と愛を忘れない。手を離したらばらばらに壊れてしまう寝床では、冒険にでることさえ儘ならない。だがしかし、今はまだ小さいが自分の城が、確かにある。そのあたたかな寝床が、佐々木の帰りを待っているのだ。行ってきますと、おかえりなさいの間の束の間。彼はひとり、冒険に出る。



+++


―きっと、ブルースの神様に愛されているのだ。

目の前に降り注ぐ歌声に、ふと、思った。


だから、

この先何が起ころうと、佐々木亮介のブルースが損なわれることはないのだ、と。


空の上のブルースマンたちが、佐々木の声に合わせてセッションを始める。


下北沢の夜。

そんなまやかしすら、垣間見た気がした。


2014/01/03 
過去最大のボリュームと相成りました。今、書いておかなければ。そう思わされる瞬間が数多にあった。因みに、本当はフラッド結成日の1月2日に公開する予定でした。
すっかり泡の無くなった温いビールで、黒い目のブルースマンに乾杯。
イシハラ マイ

ライヴレポート | 01:07 | author イシハラマイ | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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